ばのブログ

フルゆとり世代の俺

望まない予想ほどよく当たるのは偶然か

空に気球を描いた。人が乗って重さが増した気球は燃料を燃やしてまた宙を舞う。遠くに行く気球は目に焼き付いているのに帰ってくる気球は想像できなくて、もう二度と会えない気がした。

空を見上げては鳥に嫉妬した自分が今大地を見下ろしている。いつもは見上げているあの山と目が合った気がした。空はいつも広い。そんな当たり前のことを空を見上げては想い続けてきたけれど、宙を舞っても相変わらず空が広いことは当たり前ではなかった。このままどこまでも飛ぶことができたなら振り返ることはないのかな。

高度を下げる気球はどこか寂しそうに見える。沈み始めた太陽に照らされたあの人の顔は暗い影になった。読み取れない表情を待たずに抱き締めたその体はとても冷たくて抱き締めた腕に力が入った。本当にここままどこか遠くに行ってしまうような感覚は気のせいと言うにはやけに鮮明で、与えるはずだった体温は薄く見える月に吸われていった。

うつむきながら勢いよく抱かれた腕は濡れていた。安心させるために抱き返した腕に心は宿らなかった。このままでいる時間は長くない。言葉に出さなくても理解している二人の影はまもなく消えた。月光の輝きは増していき闇は更に深くなる。全てを吸い込む月が消える時、ここにはもう誰もいない。