歓迎

「今からどちらかを殺します、最愛の女性かあなたの母親どちらを選びますか。」
突然そんなことを言われたら迷います。
迷うというより選べません。
いつも思うんですがこの質問自体がナンセンスだと思います。
こんな事を言ってくる畜生さんに言っても仕方ないのかもしれませんが、選ぶ時間を許されると余計な思い出が浮かびます。
二人に生きるための懇願なんてされた日には最悪です。
そこで提案があるんです。
ちょっと二人とも黙ってて。
選ぶ時間を短くしてみませんか。
畜生さんの言い分もわかりますよ。
苦しんでる姿を見たいんでしょう、それが醍醐味ですもんね。
でもこちらの言い分も聞いてください。
時間かかると思いませんか
しかもそういう場合って失敗すること多いんですよ。
少しの隙から逆襲されたりとか、ヒーローや助っ人の乱入とか。
そうなると損をするのは畜生さんなんですよ。お前うるさいな、１ポイント減点。
私としても苦しむ時間が減りますし、畜生さんも確実に一人殺せますよ。
もっと言えば殺した後に私の苦しむ姿も見れるわけですから、お得な気がしませんか。
母さん、その私を殺しなさいってやつイラつくから止めて。１ポイント減点。
あ、そうですよね。肝心の時間なんですけど私が考えているのは１秒です。
先ほどの質問をしてもらって1秒以内に答えたほうを殺してください。
もし、答えるのが少しでも遅れたら両方殺していただいて構いません。
ここにきて二人を殺せるチャンスまであるんです。これを呑まない手はないと思うんですが。
え、そうやって話している間に考えているんじゃないかって。
確かにそうも取れるかもしれませんね。これは申し訳ないことをしました。
これでは畜生さんのメリットが減ってしまいますね。
わかりました、二人とも殺してください。
ん、それだと目的が達成できないと。
苦しんでるように見えないというんですね。
見えないだけで苦しんでるかもしれませんよ。
苦しんでるのか苦しんでないのか。大切な人の為に悲しめる心を持っているのか、前提としてこの二人が大切なのかどうか。
畜生さんは何をもって人選したんですか。
血の繋がった人間とただの口約束にも思える関係の女性が必ずしも大切でしょうか。
近しい人が死ねば悲しむとそうお思いですか。
家庭の環境は境遇は性格は。
そのような背景を加味して頭のネジが飛んでたらどうしますか。
畜生さんはなぜ殺すんですか。
殺すことのメリットが、苦しめるという目的が達成されなかったら苦しむのはどちらなんでしょうか。
ナイフで刺した感触も引き金を引いた感触も脳に刻まれ閉まらない引き出しからずっとこちらを覗いていたら、快楽殺人者ならどれだけ心地いいんでしょうね。
いっそのこと私も殺しますか。いいですよ。

この場を握っているのは畜生さんあなたなんだから。
ほら、殺せよ